パートは4月・5月・6月の収入と働き方に注意!標準報酬月額・社会保険料を解説

  • パートで働くことはメリットが大きい反面、働き方によっては社会保険料が増えてしまう可能性があります。特に、4月・5月・6月の収入は社会保険料に影響するため、パートで働く際は注意しましょう。

    本記事では、パートで働く際の社会保険料に影響する標準報酬月額の概要や、社会保険料の計算方法について解説します。



パートは4月・5月・6月の収入と働き方に注意

  • パートは、4月・5月・6月の収入と働き方に、注意する必要があります。以下で、理由を解説します。



4月・5月・6月の収入で社会保険料が決まる

  • 企業の従業員の社会保険料は、標準報酬月額に基づき算出されます。標準報酬月額は、毎年4月・5月・6月の給与支給額の平均をもとに計算され、その年の9月に改定されます。給与が毎月変動しやすいパートの場合、4月・5月・6月の収入が他の月よりも多い場合、社会保険料で損をしてしまう可能性があるため注意が必要です。

    アルバイトが社会保険を抜ける方法について、詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。
    アルバイトが社会保険を抜ける方法|社会保険のメリット・デメリットも解説


社会保険料とは

  • 社会保険料とは、従業員が失業したり、病気やケガによって休業したりした際に、必要な保障を受けられるよう毎月納付する保険料です。具体的には、以下の保険があります。


  • ・雇用保険
    ・健康保険
    ・労災保険
    ・介護保険
    ・厚生年金保険
    ・国民年金保険




パートの標準報酬月額とは

  • 標準報酬月額とは、毎月の給与額を区切りのよい幅で区分したものです。健康保険は50の等級、厚生年金保険は32の等級が設けられています。標準報酬月額は、前述のとおり社会保険料の算出に用いられます。基本給の他、残業手当や通勤手当なども、標準報酬月額の対象です。

    ※参考:随時改定(月額変更届)|日本年金機構


標準報酬月額の対象

  • 標準報酬月額には、含まれるものと含まれないものがあります。標準報酬月額の対象について、詳しく解説します。



報酬月額に含まれるもの

  • 報酬月額に含まれるものとして、まずは基本給・残業手当・各種手当が挙げられます。各種手当とは、通勤手当・家族手当・住宅手当・役職手当を指します。報酬月額には、労働の対価として受け取る金銭以外のものも含まれることが特徴です。具体的には、通勤定期券・社宅・食事などの現物で支給されるものが当てはまります。


報酬月額に含まれないもの

  • 報酬に含まれないものとしては、臨時で発生した報酬や、年3回以下の賞与などが該当します。また、結婚祝いや出産祝いなどの各種祝い金やお見舞金、出張の際などに立て替えた経費なども、報酬月額には含まれません。賞与については、賞与ごとに「標準賞与額」が算出され、賞与を受け取る際に社会保険料として天引きされます。

    ※参考:Q.標準報酬月額の対象となる報酬とは何ですか。|日本年金機構


標準報酬月額が決まるタイミング

  • 標準報酬月額が決定するタイミングは、主に3つあります。以下で、それぞれ詳しく解説します。



入社時

  • 企業に新しく入社し、被保険者としての資格を取得した際に標準報酬月額が決まります。入社してすぐは給与支払いの実績がないため、未払いのタイミングで手続きが行われることが基本です。そのため、標準報酬月額は、受け取り予定の給与に基づき計算されます。

    ※参考:厚生年金保険の保険料|日本年金機構


年1回の定時決定

  • 標準報酬月額は、毎年定期的に見直しが行われ、改定されます。改定の際は、4月・5月・6月の3か月間に支払われた給与の総額を3で割り、平均額を算出して標準報酬月額とします。年間で給与額に大きな変更がなければ、その年の9月から翌年の8月までは、同額の社会保険料が適用される仕組みです。

    ※参考:厚生年金保険の保険料|日本年金機構


変更が生じた場合の随時改定

  • 前述のとおり、標準報酬月額は年に1回改定することが基本です。しかし、給与に大幅な変更が生じた際は、事業主からの届出に基づき随時改定を行う必要があります。大幅な変更とは、連続した3か月の給与を3で割った際に、これまでの標準報酬月額と2等級以上の変動が発生した場合です。随時改定は、厚生労働大臣が必要であると認めたときに行われます。


  • <産前産後休業終了時の改定>
    産前産後休業終了後、連続する3か月の報酬の月平均が休業前と比べて1等級以上差がある場合は、4か月目から新たな標準報酬月額に改定することが可能です。産前産後休業終了時の改定は、事業主が日本年金機構に届出を出す必要があります。

    ※参考:産前産後休業終了時報酬月額変更届の提出|日本年金機構


  • <育児休業等終了時の改定>
    育児休業等終了の場合も、産前産後休業と条件は同じです。育児休業等終了後の3か月の報酬月平均が、休業前と比較して1等級以上差がある場合に、標準報酬月額を改定します。事業主が日本年金機構に届出を出すことによって、4か月目から新しい標準報酬月額に変更となります。

    ※参考:厚生年金保険の保険料|日本年金機構


社会保険料の計算方法

  • 次に、社会保険料の計算方法を詳しく解説します。



標準報酬月額・保険料率

  • 社会保険料の計算方法は、「標準報酬月額×保険料率」で求められます。まずは、自身の給与に当てはまる標準報酬月額を確認しましょう。保険料を算出するにあたって、標準報酬月額を利用するものは、健康保険・介護保険(40歳以上の場合)・厚生年金の3つです。保険ごとに異なる保険料率が定められているため、それぞれ確認したうえで社会保険料を算出します。

    ※参考:厚生年金保険の保険料|日本年金機構


標準報酬月額の等級

  • 標準報酬月額は、給与に応じて等級が定められています。等級は、以下のとおりです。


  • ・健康保険:5万8,000円~139万円(50等級)
    ・厚生年金:8万8,000円~65万円(32等級)




保険料率

  • 前述のとおり、標準報酬月額を使って計算する保険料は、健康保険・介護保険・厚生年金の3つです。そのうち、健康保険料と介護保険料は、健康保険組合の種類や地域によって保険料率は異なるため、それぞれ確認する必要があります。


パートの社会保険料は?

  • パートも労働時間と労働日数が以下の条件に当てはまる場合は、社会保険料の被保険者となり、社会保険料を毎月負担する必要があります。


  • ・1週あたりの所定労働時間が、同じ事業所の一般社員の4分の3以上の場合
    ・1月あたりの所定労働日数が、同じ事業所の一般社員の4分の3以上の場合



4月・5月・6月にパートで働くメリット

  • 前述のとおり、パートの保険料は4月・5月・6月の給与をもとに算出するため、4月・5月・6月のパート収入が増えると、社会保険料の負担も増加します。社会保険料の負担が増えると手取り額が減少する一方で、いくつかのメリットもあります。ここでは、それぞれの内容を詳細に解説します。



傷病手当金が増える

  • 傷病手当金とは、病気やケガで休業せざるを得なくなってしまった場合に、一定の金額を保障してくれる制度です。給付額は標準報酬月額をもとに決定されるため、標準報酬月額が高いほど傷病手当金が増えることになります。傷病手当金の支給期間は支給開始日から通算して1年6か月で、万が一の際にもらえる金額が多くなる点がメリットです。


出産手当金が増える



各種厚生年金が増える

  • 厚生年金は、老齢厚生年金・障害厚生年金・遺族厚生年金の3つです。厚生年金も標準報酬月額に基づき計算されるため、標準報酬月額が多いほど、各種厚生年金でもらえる金額も多くなります。退職後の生活や病気やケガで働けなくなった際に、より多くの金額をもらえることはメリットといえるでしょう。

    アルバイトは厚生年金に加入できるのか否かについて、知りたい方は以下の記事をご覧ください。
    アルバイトは厚生年金に加入できる?メリット・デメリットや具体的例を解説


賞与の社会保険料の計算方法

  • 前述のとおり、賞与は標準報酬月額の対象外です。しかし、賞与にも社会保険料がかかります。賞与の場合、毎月の給与とは別に「標準賞与額」を計算し、標準賞与額をもとに社会保険料を納めます。賞与の社会保険料の計算方法は、「標準賞与額×保険料率」で求めることが可能です。標準賞与額は、支給された賞与額から1,000円未満を切り捨てた額になります。

    ※参考:令和6年度保険料額表(令和6年3月分から)|全国健康保険協会


社会保険料の天引きのタイミング

  • 社会保険料の支払期限は、翌月末です。例えば、4月分の社会保険料は5月末までに納付しなければなりません。保険料を納付するパターンとしては、給与から天引きした保険料をその月のうちに納付する方法と、給与から天引きした保険料を翌月納付する方法があります。


まとめ

  • パートで働く際に毎月支払う社会保険料は、基本的に、4月・5月・6月の給与をもとに算出された標準報酬月額で決まります。手取りを減らしたくない場合は、4月・5月・6月の3か月は、必要以上に多く働かないよう注意する必要があるでしょう。