パートでもiDeCoに加入すれば税金が優遇される?制度内容やメリットを解説

  • iDeCoは、老後の生活を支えるための私的年金制度です。「収入が少ないパートはiDeCoに加入しても意味がない」という意見もある一方で、メリットを得られるケースも少なくありません。

    本記事では、iDeCoの概要や加入前に知っておきたいポイント、パートがiDeCoに加入するメリット・デメリットなどについて解説します。ぜひ参考にしてください。


パートでもiDeCoに加入するとメリットが得られる


  • iDeCoに加入するメリットは、加入することによって掛金全額が所得控除されるため、パートで得た収入に課される税額が少なくなる点です。

    パートで働く主婦には、所得税の扶養の範囲で働く人もいるでしょう。年収103万円以下に収入を抑えると所得税はかかりませんが、年収100万円を超えると、多くの自治体では住民税の納税義務が生じます。つまり、所得税の扶養内で働くパートでも、iDeCoに加入していれば、翌年の住民税における負担を抑えられるのが魅力です。


そもそもiDeCoとは


  • iDeCo(個人型確定拠出年金)とは、公的年金に上乗せできる年金制度のことです。iDeCoの運営管理機関は、定期預金や投資信託など、多くの金融商品を取りそろえています。加入者は、用意された金融商品のなかから投資するものを自由に選び、老後に向け資産形成に取り組みます。公的年金の被保険者で20歳以上65歳未満であれば、誰でもiDeCoに加入可能です。

    前述のように、毎月の掛金全額は所得控除の対象になります。掛金は毎月5,000円から設定でき、1,000円単位で上限額まで自由に設定可能です。なお、月々の掛金の上限額は職業別に決められており、扶養内のパート(第3号被保険者)の場合は、2万3,000円が上限となります。

    ※参考:従業員数100人以下の事業主のみなさま | 社会保険適用拡大 特設サイト


扶養内のパートが知っておくべき「年収の壁」とは


  • 「年収の壁」は複数あり、扶養内で働くパートならおさえておきたいポイントです。ここでは、住民税・所得税・社会保険料に関する、年収の壁を解説します。


  • 年収100万円の壁(住民税)
    パートの年収を103万円以下に抑えれば、所得税を納める義務はありません。また、多くの自治体では、年収100万円を超えると住民税を納める義務が生じます。つまり、年収が100万円以下の場合、所得税・住民税ともに発生しない可能性が高く、iDeCoの所得控除の恩恵を受けられません。

    住民税についての記事はこちら


  • 年収103万円の壁(所得税)
    年収103万円を超えると、所得税を納税する義務が生じます。2024年現在、給与所得控除は55万円で、基礎控除は48万円です。2つの控除を合算した103万円を下回るように年収を調整すると、所得税を納めずに済みます。なお、所得税額は、年収103万円を超えた金額に所得税率5%をかけることで、算出可能です。

    所得税についての記事はこちら

    ※参考:No.1199 基礎控除|国税庁

    ※参考:No.1410 給与所得控除


  • 年収106万円、130万円の壁(社会保険料)
    パート先の規模にもよりますが、以下の要件に全て該当する人は、年収が106万円を超えると社会保険料への加入が義務となります。

    ・所定労働時間が週20時間以上30時間未満
    ・1か月の賃金が8万8,000円以上
    ・2か月を超える雇用の見込みがある
    ・学生ではない

    上記の要件を満たさない人は、年収130万円を超えると、社会保険料を支払わなくてはなりません。ただし、年収を129万円に抑えて、iDeCoを満額(27万6,000円)で積み立てれば、所得税と社会保険料を負担せずに済みます。

    例えば、年収を128万円に抑えると、課税所得は25万円となります。計算式は、以下のとおりです。

    給与収入128万円-55万円(給与所得控除)-48万円(基礎控除)=25万円(課税所得)

    iDeCoの年間掛金が27万6,000円であるため、課税対象の所得は0円になる仕組みです。

    ※参考:従業員数100人以下の事業主のみなさま | 社会保険適用拡大 特設サイト

    社会保険についての記事はこちら


パートがiDeCoに加入した場合のメリット


  • ここでは、パートがiDeCoに加入するメリットを解説します。税制優遇を受けつつ、上手に資産運用に取り組みましょう。


  • 掛金が全額、所得控除の対象となる
    iDeCoでは、毎月の掛金が全額、所得控除の対象になります。老後の資金を貯めつつ納税額を減らせるため、上手く運用すれば、手元により多くの資金が貯まる仕組みです。

    所得控除を受けるには、年末調整や確定申告を行う必要があります。パート先で年末調整の時期になったら、iDeCoの掛金を申告しましょう。課税対象の所得からiDeCoの掛金が差し引かれると、所得税や住民税の負担額を減らせます。

    ただし、年の途中でパートを辞めた場合は、年末調整をしてもらえません。確定申告の際に、掛金の所得控除を忘れずに記載しましょう。


  • 運用益が非課税になる
    投資信託で得た利益や定期預金で得た利息は、通常、税率20.315%の課税対象となります。20.315%の内訳は、復興特別所得税を含む所得税の分が15.315%で、住民税の分が5%です。

    一方、iDeCoを活用すると、投資信託の売買益や定期預金の利息が非課税になり、運用益として蓄積されます。長期間複利効果で運用すれば、将来的に多くの資金を得ることも期待できるでしょう。

    ※参考:株式・配当・利子と税|国税庁


  • 受取り時の税金負担が軽減される
    iDeCoで運用したお金を受け取るときは、退職所得控除もしくは公的年金等控除が適用されます。どちらの控除が適用されるかは、受取方法によって異なります。


  • <【一時金として受け取る場合】退職所得控除が適用される>
    お金を一度にまとめて受け取る場合は、退職所得控除が適用されます。以下のとおり、控除額の算出方法は、勤続年数に応じて異なります。

    ・勤続年数20年以下の場合:40万円×勤続年数(80万円未満の場合は80万円)
    ・勤続年数20年超の場合:800万円+70万円×(勤続年数-20年)

    ※参考:No.1420 退職金を受け取ったとき(退職所得)|国税庁


  • <【年金として受け取る場合】公的年金等控除が適用される>
    年金として分割でお金を受け取る場合は、公的年金等控除が適用されます。分割できる期間は5年以上20年以下で、源泉徴収される額が決まる計算式は、以下のとおりです。

    ・源泉徴収される額=(公的年金等の収入金額-一定の控除額)×5.105%

    ※参考:No.1600 公的年金等の課税関係|国税庁


パートがiDeCoに加入した場合のデメリット


  • パートがiDeCoに加入することで、さまざまなメリットを得られる一方で、いくつかのデメリットもあります。メリットとデメリットを踏まえたうえで、iDeCoへの加入を検討しましょう。


  • 年収が100万円未満だとiDeCoのメリットを感じにくい
    年収が100万円未満の場合、iDeCoの主要なメリットである所得控除を、十分に活用できません。前述のように、年収が103万円以下であれば、所得税が非課税となり、年収が100万円以下の場合は、多くの自治体で住民税が非課税となります。

    ただし、iDeCoには所得控除以外にも、さまざまな魅力があります。以下は、その一部です。

    ・月5,000円という少額の掛金から投資を始められる
    ・運用益が非課税となる
    ・受取り時に税金の負担を抑えられる

    年収が少なくても、諦めずにiDeCoによる資産運用に取り組む価値は、十分にあると言えるでしょう。


  • 元本割れする可能性がある
    iDeCoには、元本割れするリスクがあります。元本割れとは、投資した資金総額よりも、運用後の資金額が下回ってしまうことです。iDeCoでは、投資信託や保険商品などのさまざまな金融商品から、自分で投資するものを選べます。元本割れのリスクを抑えるには、長期投資・分散投資が効果的です。

    ただし、手数料で元本割れする可能性もあるため、注意してください。たとえ元本確保型の金融商品でも、手数料の支払いによりマイナスになるケースは少なくありません。手数料を確認したうえで投資する金融商品を決め、頻繁に金融商品を変更せず、焦らずじっくり運用しましょう。


  • 運用期間が短いと受け取れる年齢が先延ばしになる
    iDeCoの受給開始年齢は、原則60歳です。60歳時点で通算加入者等期間が10年よりも少ないと、受給開始年齢が先延ばしされます。以下は、通算加入者等期間に応じた受給開始年齢をまとめたものです。



  • 60歳から受給を開始したいときは、少なくとも50歳前にiDeCoを始めなければいけません。すでに50歳以上の人は、受給開始年齢を把握し、計画的に老後資産を蓄えましょう。

    なお、iDeCoは65歳未満であれば加入できます。60歳以上でiDeCoに加入した人は、通算加入者等期間に関係なく、加入から5年を経過した日から受給可能です。

    ※参考:iDeCo(イデコ)の加入資格・掛金・受取方法等|iDeCo(イデコ)公式サイト


まとめ


  • 年収が少ないパートでも、iDeCoに加入することによって得られるメリットは、さまざまです。所得控除は受けられなくても、iDeCoに加入すれば少額から投資を始めることができます。運用益が非課税であるため、将来的に多くの資金を得られる可能性があるでしょう。また、受給時の税金負担が軽減される点も、iDeCoのメリットです。

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