アルバイトに年末調整は必要?対象者の条件や年末調整をしないとどうなるかを解説

  • アルバイトは勤務先での年末調整が必要なのかわからず迷っている人もいるでしょう。この記事では、年末調整の概要に触れたうえで、年末調整と確定申告の違いやそれぞれの対象者の条件などを解説します。確定申告をすると得するケースについても解説するため、ぜひ参考にしてください。


年末調整とは


  • 年末調整とは、毎月の給料から差し引かれている源泉徴収税の差額を調整する手続きです。事前に年間の税額を確定させる必要があるため、毎年12月に行われます。正社員ではなくアルバイトとして働いている場合も、一定の条件を満たしていれば年末調整の対象になります。


アルバイトに年末調整は必要?


  • アルバイトとして一定以上の年収を得ている人は、年末調整の対象者となります。具体的には、年収103万円以上を得ており、所得税の納付義務が生じている人が年末調整の対象です。一方、年収103万円未満で、もともと源泉徴収されていない人は、年末調整の必要がありません。年末調整の必要性は年収がカギになるため、よく確認しましょう。


  • 103万円の壁と130万円の壁とは
    年収103万円を超えると所得税が発生し、年末調整の対象になります。このことは「103万円の壁」と表現される場合も多いです。給与所得控除の最低額の55万円と、所得額に適用される基礎控除の最高額の48万円を合計すると103万円になるため、年収103万円以上になると所得税の納税義務が生じます。

    また、社会保険の扶養に関する「130万円の壁」もあります。年収130万円を超えた場合、社会保険に自ら加入する義務が生じ、配偶者や親の扶養から外れなければなりません。


年末調整と確定申告の違い


  • 年末調整と確定申告はいずれも税金に関する手続きですが、それぞれ違いがあります。年末調整は源泉徴収の差額を調整する手続きであり、企業が対応します。一方、確定申告は所得や税金の計算結果の届出であり、納税者本人が行わなければなりません。それぞれの詳細については、以下の記事で解説しています。

    税金についての記事はこちら

    確定申告についての記事はこちら


確定申告をすると得するケース


  • 確定申告により控除を適用できる場合は、確定申告したほうが得する可能性があります。たとえば、年間の医療費が10万円以上かかっていれば、医療費控除を受けられます。医療費控除は、家族全員分の医療費の合計が10万円以上なら利用可能です。
    また、住宅ローン控除を受ける場合には、初年度に確定申告が必要です。さらに、ふるさと納税でワンストップ特例制度を利用していない人は、確定申告をすると寄附金控除を受けられます。納税する金額によって控除も変動するため、よく確認しましょう。


年末調整の対象になる人とならない人


  • 年末調整の対象になる人とならない人には、どのような違いがあるのでしょうか。それぞれの条件を解説します。


  • 年末調整の対象になる人
    年末調整の対象になる条件は、年末まで勤務先に在籍しており、給与所得者の扶養控除等(異動)申請書を提出していることです。年の途中で退職した場合、前の職場では年末調整してもらえないため、自分で確定申告する必要があります。ただし、新しい勤務先で働き始めているなら、退職した職場で受け取った源泉徴収票を提出するとあわせて年末調整してもらえます。


  • 年末調整の対象にならない人
    年の途中で退職した場合は、年末調整の対象になりません。また、年末に在籍していても、給与所得者の扶養控除等(異動)申請書を提出しないと、年末調整をしてもらえなくなります。

    さらに、年間の給与総額が2,000万円以上になると、勤務先での年末調整の対象ではなくなります。災害減免法の規定に基づき、その年の給与に対する所得税・復興特別所得税の源泉徴収について徴収猶予や還付を受けている場合も同様です。


アルバイトの年末調整に必要な書類


  • アルバイトで年末調整をしてもらうには、書類の提出が必要です。具体的にどのような書類が必要か解説します。


  • 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書
    給与所得者の扶養控除等(異動)申告書は、配偶者や扶養家族の有無について記載する書類です。一般的には、アルバイトとして雇用された際の最初の手続きにおいて提出します。配偶者控除だけでなく、勤労学生控除を受けるうえで必要であるため、正確な情報を記載して提出しましょう。


  • 基礎控除申告書
    基礎控除申告書とは、基礎控除を受けるために、概算の合計所得金額を記入して提出する書類です。基礎控除では、年収2,500万円以下の人が48万円の控除を受けられます。以前はすべての人に一律で38万円の控除が認められていましたが、仕組みが変わったため、条件を満たす人は基礎控除申告書を提出する必要があります。


  • 配偶者控除等控除申告書
    配偶者控除等控除申告書とは、配偶者に関連する控除を受けるための書類です。配偶者本人の合計所得金額が1,000万円以下であり、その配偶者の所得金額が133万円以下であれば、配偶者控除および配偶者特別控除を受けられます。


  • 保険料控除申告書
    保険料控除申告書とは、各種保険料を支払っている場合に受けられる控除について申請する書類です。保険料控除には以下の種類があります。

    ・生命保険料控除
    ・地震保険料控除
    ・社会保険料控除
    ・小規模企業共済等掛金控除

    控除の対象となる保険料で支払っているものがあれば、保険料控除申告書を作成して忘れずに提出しましょう。


【その他】年末調整をするパターン


  • 複数の収入源がある場合、年末調整の際にそれぞれ対応が必要です。ここでは、パターンごとに解説します。


  • アルバイトを掛け持ちしている
    複数のアルバイトを掛け持ちして働いているなら、原則として最も多い収入を受け取っている勤務先で年末調整を受けましょう。ただし、どの勤務先で年末調整を受けるべきかについては、明確な基準があるわけではありません。状況に応じてそれぞれの勤務先と相談しながら、どこで年末調整ができるか確認しましょう。


  • 短期バイトの収入がある
    短期バイトの収入を受け取っている場合、短期バイトで勤務した企業から源泉徴収票を受け取りましょう。年末の時点で特定の勤務先があれば、その勤務先に源泉徴収票を提出すると年末調整をしてもらえます。年末の時点で働いていない場合は、受け取った源泉徴収票をもとに自分で確定申告する必要があります。


  • アルバイトの他に収入がある
    アルバイトの他に年間で20万円以上の所得がある人は、その分について自分で確定申告しましょう。副業以外に株の配当や売買益などによる収入がある場合も、確定申告が必要です。勤務先の年末調整では対応できないため、早めに準備を整えて対応してください。


アルバイトが年末調整をしないとどうなる?


  • アルバイトが年末調整をしないと、さまざまな問題が生じる可能性があります。以下で解説します。


  • 納税の額が増える
    年末調整をしなければ、本来は受けられるはずの控除も受けられなくなり、納税額も増えます。年末調整は所得税だけでなく住民税の額にも影響するため、注意しましょう。住民税は各種控除の適用後の課税所得をもとに計算されるため、納税額を抑えるには年末調整を受ける必要があります。


  • 確定申告を行う必要がある
    アルバイトの勤務先で年末調整を受けられなければ、自分で確定申告の手続きをする手間がかかります。確定申告にはさまざまな種類の書類があり、慣れていないと複雑でわかりにくいです。翌年の2月16日から3月15日までの間に必ず手続きを済ませる必要があるため、注意しましょう。


企業が年末調整をしない場合の罰則


  • 年末調整に対応しない企業には、法律により罰則が設けられています。具体的には、1年以下の懲役または50万円以下の罰金です。状況によっては、10年以下の懲役もしくは200万円以下の罰金が科される可能性もあります。企業は必要に応じて年末調整する義務があるため、適切に対応してもらえない場合は冷静な対応が必要です。


企業が年末調整をしない場合の対応


  • 企業が年末調整しないときは、どのように対応すればよいのでしょうか。以下で対応方法を解説します。


  • 確定申告について確認する
    年末調整の連絡がない場合、そもそも企業の担当者が年末調整について失念している可能性があります。気がついた時点で担当者に確認してみましょう。確認したものの、必要な書類の提出が間に合わなかったときは、確定申告の期間中に自ら手続きする必要があります。


  • 税務署に相談する
    企業が年末調整の対応を怠っている場合、税務署へ相談しましょう。適切な対応をしていないとわかれば、税務署が企業に対して直接指導してくれる可能性があります。また、企業に源泉徴収票の発行を依頼しても対応してもらえないときも、税務署へ相談するとよいです。他にも年末調整や確定申告などについて疑問や不安があれば、税務署に確認してください。


まとめ


  • アルバイトとして働いている場合も、一定以上の収入を得ているなら年末調整が必要です。年末調整を受けられないと、自ら確定申告する手間がかかる可能性があります。適用できる控除の種類によっても提出すべき書類に違いがあるため、よく確認しましょう。

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