アルバイトは1日・1週で何時間まで働けるのか|労働時間や割増賃金のルールを徹底解説

  • 2023年10月現在、年収が106万円を超えると、扶養から外れて社会保険料などの負担によって手取りが減る「年収の壁」解消が検討されています。この背景もあって、アルバイト時間を増やそうと検討している人も多いのではないでしょうか。

    そこでこの記事は、アルバイトは何時間まで働けるのか、税金・社会保険料の加入ライン、労働時間を増やす際の注意点、残業したときの割増賃金、労働時間に関するよくある質問などを解説します。上手に収入アップを目指すために、ぜひ役立ててください。

アルバイトの労働時間の上限は何時間までなのか

  • アルバイトの労働時間の上限は、法律によって決まっています。通常の労働時間と、時間外労働時間の条件をみていきましょう。
  • 1日8時間・1週間40時間までが上限
    アルバイトの労働時間の上限は、労働基準法第32条によって1日8時間・1週間40時間までと定められています。労働時間の上限は雇用形態に関係なく、アルバイトや社員、派遣社員、契約社員など全員同じ条件です。

    労働基準法第32条では、労働条件の上限の遵守を、雇用主側(企業)の義務としています。したがって、たとえアルバイトが雇い主に「働かせてほしい」と頼んでも、受け入れてもらえることはありません。
  • 例外的に1日8時間・1週間44時間までが上限の職場もある
    「特例措置対象事業場」として認められている事業場は、例外的に1日8時間・1週間44時間までの労働が認められています。特例措置対象事業場は具体的には以下のような職場です。
  • 【特例措置対象事業場の例】
    ・商業:卸売業、小売業、理美容業、倉庫業など
    ・接客娯楽業:旅館、飲食店、ゴルフ場、公園・遊園地など
    ・保険衛生業:病院、診療所、社会福祉施設、浴場業など
    ・映画、演劇業:映画の映写、演劇など

    上記の職場に該当する場合、通常よりも1週間あたりの労働時間を4時間増やせます。
  • 時間外労働の上限は月45時間・年360時間まで
    「時間外労働」とは、1日8時間・1週40時間を超える労働時間です。この時間外労働にも、法律で上限が設けられています。

    時間外労働の上限は、雇用形態を問わず、月45時間、年360時間までです。臨時的に特別な事情がない限り、アルバイトもこの上限を超えて働くことはできません。

    また、時間外労働を超えて働かなければならない特別な事情がある場合は、労使(企業とアルバイト)の合意を結ぶと、通常の上限を超えられます。しかし、この場合でも「年720時間以内」「時間外労働+休日労働が100時間未満、2~6か月平均80時間以内」「月45時間以上働けるのは年6か月まで」という条件があります。

アルバイトにおける税金・社会保険の加入ライン

  • 年収が103万円以下であれば、親や世帯主の扶養に入ることができ、所得税が課税されません。しかし、年収が103万円を超えると、超えた額に対して所得税がかかります。年収が103万円を少し超える程度であれば、納税によって収入が減る可能性があるため、注意しておきましょう。

    そして、社会保険加入の条件は、アルバイトや正社員などを問わず同じです。
  • 【社会保険の加入条件】
    ・週の所定労働時間が20時間以上
    ・月額賃金が8.8万円以上(年収105.6万円)
    ・2か月を超えて雇用される見込みがある
    ・学生ではない
    ・従業員数101人以上の会社に勤めている
  • 学生以外の労働者のうち、労働時間が週20時間以上になる人は社会保険に加入します。また、31日間以上働く見込みがあり、雇用契約で定めた所定労働時間が週20時間以上となる人は、雇用保険の加入対象です。

    また、従業員数101人以上の会社に勤める人は、雇用形態に関係なく、健康保険と厚生年金保険への加入が必要になります。

    なお、上記条件を満たさなくても、週の所定労働時間および月の所定労働日数が、正社員の3/4以上の人も加入が必要です。

アルバイトの労働時間を考えるときに注意しておきたいこと

  • 労働時間の上限の他にも、アルバイトの労働時間に関する法律上のルールがあります。ここでは、アルバイトの労働時間を考えるときに注意しておきたいポイントを紹介します。
  • 休暇を取ることが義務付けられている
    アルバイトを雇う雇用主は、毎週1日の休日か、4週間を通じて4日以上の休日を取らせる義務があります。つまり、アルバイト側からみると、仕事をする日を増やしたくても法律上増やせないケースがあるわけです。例えば、「収入アップのために、今月はまとめてシフトを入れる」といった対応はできません。
  • 副業・兼業は労働時間の上限が通算される
    勤務先が2つ以上にのぼる場合は、労働時間が通算されて上限が適用されます。例えば、2つのアルバイト先を掛け持ちしている場合でも、1日8時間、1週間40時間までが上限になります。

    このため、例えばアルバイト先Aで日中8時間働いた後、アルバイト先Bで夜間4時間働くようなことはできません。気付かず法律違反にならないように、注意しておきましょう。
  • 労働時間・時給などが記載された書面をもらっておく
    労働時間が予想外に増減しないように、アルバイト先から時給、労働時間などについて書かれた書面をもらっておきましょう。「面接で聞いた内容と違ってシフトを入れてもらえず、予想よりも収入が少なかった」「出勤日が多すぎて思うように休めない」といったトラブルを予防できます。

    また、労働時間の明示は義務(労働基準法第15条)なので、アルバイト先は明示を拒否できません。労働者の権利ですので、遠慮なく要求しましょう。
  • 「残業」時間と「時間外労働」時間が違う場合がある
    「残業」と「時間外労働」を混同すると、収入が変わる場合があるので注意しておきましょう。

    残業とは、所定労働時間(会社が定めた労働時間)を超える労働です。一方、時間外労働とは法定労働時間(1日8時間・1週40時間)を超える労働です。

    例えば、始業時間9:00~、休憩12:00~13:00、終業時間17:30が所定労働時間だったとしましょう。この場合は、18:00まで働くと残業時間は30分です。

    一方、時間外労働はありません。つまり、17:30~18:00までに時間外労働による割増賃金が付くと勘違いすると、予定より収入が少なくなるため注意が必要です。割増賃金については後ほど解説します。
  • 18歳未満の人は原則午後10時を超えて働けない
    18歳未満の場合は、原則として午後10時~翌5時まで仕事ができません。また、原則として時間外労働、休日労働もできません。これは労働基準法第61条に定められています。18歳未満の人は、違う条件で働けるアルバイト先を探すとよいでしょう。

アルバイトの残業時間は割増賃金になる

  • アルバイトで働く日時によっては、割増賃金が適用される可能性があります。時間外割増、深夜割増、休日割増の3つについて、みていきましょう。
  • 時間外割増賃金(25%以上)
    1日8時間または週40時間を超えた場合は、「時間外割増賃金」が適用されます。時間外割増賃金は「通常の賃金の25%以上」と法律で保障されています。

    例えば午前9時から午後6時まで、休憩1時間が所定労働時間のアルバイト先で、午後6~8時まで時間外労働をしたとしましょう。この場合、時給が1,000円の場合は、午後6~8時は時給が1,250円以上になります。
  • 休日割増賃金(35%以上)
    労働基準法の定める「法定休日」に労働をした場合には、休日割増賃金が適用されます。法定休日とは、雇用主が与えなければならない「週1日または4週で4日」の休日です。

    休日割増賃金は通常の賃金より35%以上が保証されています。この休日割増賃金と深夜割増賃金は重複して適用可能です。例えば休日の深夜にアルバイトした場合は、「休日割増35%+深夜割増25%=60%以上」となります。

アルバイトの労働時間についてのよくある質問

  • ここからは、アルバイトの労働時間について、よくある質問を取り上げていきます。
  • 労働時間をオーバーしてしまったら違法行為になりますか?
    違法になりますが、労働者側に罰則はありません。

    法定労働時間を守るのは、雇用主側の義務となっているからです。労働時間を超過して働かせた場合には、雇用主に対して「6か月以下の懲役」もしくは「30万円以下の罰金」が科せられます。
  • 長時間労働では休憩が取れますか?
    取れます。

    6時間を超え、8時間以下の場合には45分以上、8時間を超える場合には少なくとも1時間以上の休憩が義務付けられています。

    逆に言えば、6時間以内なら休憩があるとは限りません。例えば、複数のアルバイト先を掛け持ちしていて、4時間+4時間で働く場合は、休憩なしで1日働くことになる場合があります。
  • 仕事の準備や後片付けの時間は時給をもらえますか?
    もらえます。

    仕事の準備や後片付けの時間も、正式な労働時間であるからです。

    なお、準備や後片付けの労働時間は中途半端な時間になるケースがありますが、労働時間は原則1分単位で計算されます。したがって、「15分以内は切り捨て」のような雇用主の措置は、法律違反です。こうした対応をされた際は、雇用主に訴えたり、労働局(ハローワーク)の総合労働相談コーナーに相談したりしましょう。
  • アルバイトは何時間勤務すれば有休を取得できますか?
    「雇い入れの日から6か月経過」「その期間の全労働日の8割以上出勤」という2つの条件を満たせば、10日の年次有給休暇が取得できます。
  • 6か月以上働いた場合の取得日数は次のとおりです。

    ・1年6か月:11日
    ・2年6か月:12日
    ・3年6か月:14日
    ・4年6か月:16日
    ・5年6か月:18日
    ・6年6か月以上:20日

まとめ

  • アルバイトは働きたいだけ働けるというわけではなく、さまざまな法律上の決まりがあります。労働時間を増やす際には、労働時間の上限や税金・社会保険の加入ラインなど、基礎知識を押さえておくことが重要です。

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