アルバイトの残業代で30分単位の切り捨ては違法?正しい勤怠ルールを解説

  • アルバイトの勤務時間の管理は重要であり、タイムカードを活用している企業も多いです。計算の都合上、30分単位で切り上げや切り捨てをして勤務時間を管理しているケースもあるかもしれません。この記事では、15分単位や30分単位での労働時間の端数処理に焦点を当て、勤怠管理や残業代の請求について解説します。 ぜひ参考にしてください。

勤怠管理とは

  • 勤怠管理とは、従業員の出退勤、休憩時間、有給休暇、遅刻の有無などを管理することです。自社が雇用している従業員については、雇用形態に限らず勤怠管理を徹底する必要があります。働き方改革に伴い、従業員が適切な働き方を実現するための勤怠管理に注目が集まるようになりました。
  • 雇用形態により勤怠管理の取り扱いが違う
    雇用形態に限らず勤怠管理が必要ですが、取り扱いはそれぞれ異なります。以下で詳しく解説します。
  • <正社員・契約社員>
    正社員や契約社員は、週5日以上勤務しています。働き方改革に関する法案により、有給休暇の消化が義務化されました。そのため、勤怠管理により有給休暇を取得しているか確認する必要があります。
  • <アルバイト・パート>
    アルバイトやパートはシフト制で勤務しているため、人によって勤務日や勤務時間は異なります。そのため、勤怠管理においても企業が柔軟に対応する必要があります。

勤怠管理30分単位の計算は違法

  • 勤務先でタイムカードを使用しており、30分未満の残業には残業代が支払われなかった経験がある人もいるでしょう。しかし、企業がアルバイトの時給を15分単位や30分単位で計算している場合、違法とみなされる恐れがあります。残業時間の切り捨てが行われているなら、残業代を請求できる可能性があります。
  • 30分未満の端数処理が認められる場合
    アルバイトを含むすべての労働者の時給は、1分単位の計算が原則です。そのため、残業時間の切り捨ては認められず、残業代を請求できます。ただし、厚生労働省の通達により、残業代の端数処理の例外的な運用も認められています。その場合は残業時間の切り捨てが可能となり、残業代も請求できません。

    ※参考:昭和63年3月14日付け基発150号|厚生労働省
  • <深夜割増は支払われる>
    割増賃金は時間外だけではなく、深夜に働いた場合も対象になります。 具体的には、深夜22時から翌朝5時に働くと深夜割増が発生します。深夜に勤務したら、深夜割増がついているか確認しましょう。
  • <月の残業時間は端数処理ができる>
    残業代を1か月単位で計算するなら、原則として時間外労働、休日労働、深夜労働を合計する必要があります。ただし、事務作業を簡単に済ませるための措置であり、あくまでも基本のルールとは異なる例外的な対応です。
  • <1時間を基準に50銭未満の切り捨てができる>
    残業代は、以下の計算式で算出できます。

    残業代=1時間あたりの基礎賃金×割増率×残業時間
  • 1時間あたりの基礎賃金を計算して1円未満の端数が生じた場合、50銭未満については切り捨てが認められています。ただし、これもあくまで便宜上の措置です。

残業代は全額支払われる

  • 基本的に、 残業代は全額支払う必要があります。 労働基準法第24条第1項においても「賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない」と定められています。残業したにもかかわらず残業代が支払われなければ違法である可能性があるため、状況をよく確認して適切な対応をしましょう。

    ※参考:労働基準法第24条(賃金の支払)について|厚生労働省

未払いの残業代は請求できる?

  • 未払いの残業代がある場合、支払いを請求できる可能性があります。ここでは、具体的な請求方法を解説します。
  • 未払いの残業代がある場合、支払いを請求できる可能性があります。ここでは、具体的な請求方法を解説します。
  • 残業時間がわかる証拠を準備する
    残業代を請求するには、残業の事実を証明するための証拠提出が必要です。たとえば、雇用契約書、会社の就業規則、タイムカード、タイムシート、給与明細、Web打刻などが証拠になる可能性があります。

    未払いの残業代の請求は、退職後でも可能です。しかし、タイムスタンプやメールの履歴などが決定的な証拠になるケースも多く、在職中のほうが有利に対応を進められます。
  • 会社と交渉する
    未払いの残業代については、まず勤め先に請求しましょう。1人での請求が困難なら、労働組合に相談して協力しながら請求する方法もあります。

    ただし、未払いの賃金を請求できる期限は2年までです。給与の支払日を迎えるとそのちょうど2年前の残業代は請求できなくなります。催告すれば未払いの賃金を請求できる期限を6か月延長できるため、催告だけでも早めに行いましょう。
  • 労働基準監督署に相談する
    未払いの残業代を勤め先に請求しても対応してもらえないなら、労働基準監督署に相談しましょう。残業代が未払いである事実を労働基準監督署が確認すると、企業に対して調査が実施されます。その結果、残業代の支払いに関する是正勧告をする可能性もあります。

    ただし、労働基準監督署の是正勧告に法的強制力はありません。そのため、あくまでも残業代を支払うよう働きかけるだけであり、必ず残業代が受け取れるとは限りません。
  • 弁護士に相談する
    未払いの残業代を請求する方法がわからない場合は、弁護士への相談もおすすめです。弁護士料の負担が必要ですが、自分の代わりに法律に則って適切に手続きを進めてくれます。無料で相談に乗ってくれる弁護士もいるため、まずは残業代の請求が可能かどうか確認するところから始めましょう。

残業を命令していないと言われたら?

  • 未払いの残業代を請求しても、勤め先がそもそも残業は禁止していると主張するかもしれません。しかし、実際に従業員が残業をしているなら、企業は残業しなければ終わらない仕事量を従業員に与えたとみなせる可能性があります。それにより、黙示の残業命令が認められるケースもあります。

    企業が決めた時間内に仕事が終わらなくても、指定された業務を遂行するために残業が必要であれば、残業代の支払いが必要です。

遅刻・早退したらどうなるの?

  • 遅刻や早退をした場合、賃金の扱いはどうなるのでしょうか。以下で詳しく解説します。
  • 労働していない時間は支払い対象ではない
    残業と同様、遅刻や早退についても1分単位で計算する必要があります。そのため、たとえば20分遅刻した際に30分単位で計上してはいけません。

    ただし、労働基準法第91条では、頻繁に遅刻した場合の減給について定められています。1回につき1日分の平均賃金の半額が限度とされています。頻繁に遅刻すると勤め先や同僚にも大きな迷惑がかかるため、注意が必要です。

    ※参考:労働基準法第91条|厚生労働省
  • <ノーワーク・ノーペイの原則が適用されるケース>
    ノーワーク・ノーペイの原則があり、労働していない時間については賃金が発生しません。たとえば、1時間遅刻した場合、その1時間分の賃金を企業は従業員に支払う必要はないとされています。遅刻だけでなく、早退、欠勤、介護休業などについても考え方は同様です。
  • <ノーワーク・ノーペイの原則が適用されないケース>
    ノーワーク・ノーペイの原則の例外として、 有給休暇があります。有給休暇は、休暇をとっても賃金が支払われる制度だからです。また、会社都合による休業や自宅待機などもノーワーク・ノーペイの原則は適用されません。

まとめ

  • 残業代は1分単位での計算が基本です。未払いの残業代がある場合、後からでも請求できます。残業代については、給与を受け取るたびに適切に支払われているか確認しましょう。問題があるなら、証拠を集めて早めに請求する必要があります。

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